最高裁判所第三小法廷 昭和28年(テ)3号 判決 1953年12月08日
新潟県佐渡郡畑野村大字畑野三〇三番地乙本間静江事
上告人
本間シズエ
右訴訟代理人弁護士
磯部滉
同県西蒲原郡燕町大字燕
被上告人
横山秀蔵
右当事者間の前渡金返還請求事件について東京高等裁判所が上告審として昭和二八年三月三〇日言渡した判決に対し、上告人より全部破棄を求める旨上告の申立があつた。よつて当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
高等裁判所が上告審としてなした終局判決に対しては、その判決において法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するや否につきなした判断の不当なるときに限り、当裁判所に更に上告をなし得ることは、民訴四〇九条ノ二の定めるところである。ところが本件上告理由は、手続規定に関する原判示を争うに、基本的人権の侵害なる文言を用いるにすぎず、違憲の主張には当らない。
よつて民訴四〇九条ノ三、四〇一条、九五条、八九条により裁判官全員の一致で主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)
昭和二八年(テ)第三号
再上告人 本間シズエ
再被上告人 横山秀蔵
再上告人代理人弁護士磯部滉の再上告理由
判決言渡お為さんとするにわ、其言渡期日の通知お当事者に対して為しておくことが必要である、之れお為さずして突然其言渡お為さんか当事者に対して完全なる攻撃防禦の権利お行使せしめざるものであつて、法律によらずして当事者の権利お剥奪するに等しく取りもなおさず基本的人権の侵害である。
今控訴審に於ける本件記録お調査するに、昭和二十七年十二月二十日付送達報告書にわ、控訴審判決言渡期日お書留郵便お以て本件再上告人に通知したる旨記載せられてあるが、之れわ間違いである。恐らく書留郵便に付する予定であつたが遣忘して該郵便に付しなかつたものであらう。
何となれば若し書留郵便に付したるものならば、其際当該郵便局から交付せられた郵便物受領書が存する旨であるのに此の受領書が存在していないからである。
右の理由お以て原審に上告したるも、原審わ此の理由お採用せずして再上告人の請求お排斥した。
原審わ判決言渡期日の通知わ、之れお郵便に付すれは送達となると理由付けたるも、殊に「書留郵便に付した」る旨記載し、しかも其郵便物受領証なきが如く曖昧不明の送達お送達ありたるものとすること強いて再上告人の防禦権行使お阻止するもので基本的人権の侵害である。
以上